家の光協会 ちゃぐりん3月号 ちゃぐりんホーム倶楽部 2003.12..09 「私」が食べたものが「わたし」 長崎大学環境科学部   中村修  わたしには双子の娘がいます。そのうちの一人がひどいアトピーで したので、家族全員で取り組みました。  有名な皮膚科を回っても、薬しか出してくれず、その原因さえ説明 してくれませんでした。アトピーと言うと、いろんな人たちが、いろ んな「健康食品」「民間療法」をすすめてくれました。しかし、それ らはとても高価で、にもかかわらず効果はありませんでした。「アト ピービジネス」の意味を肌で感じました。かゆみで眠れない日々を過 ごすわたしたちの弱みにつけこんだ商売でした。  そんなとき下関市立中央病院小児科の永田先生を友人から紹介して もらい、訪ねていきました。すると、「この赤くなっているところは 油、このカサカサは麦」と症状と食べ物の関係を教えてくれました。 そして、指摘して頂いたとおりに油や小麦を除去した食事をするだけ で子どもの症状は、どんどんよくなっていきました。いまでは、ほと んど完治しています。もともと旬の野菜と魚中心の食事でしたが、さ らに徹底した食事を家族全員でやっているところです。  わが家の子ども達は風邪をひいても半日でなおってしまいます。保 育園の先生から「野菜中心の食事をしているので休まないよね。野菜 を食べずにお菓子をよく食べる子は風邪を引くと数日から1週間くら い休んでます」とほめられました。  「私」が食べたものが「わたし」の体を作っているのだな、としみ じみ思っています。  社会の中で生きる「私」はいろいろな情報に囲まれていきています。 「これを食べるとアトピーがよくなります」「これを飲むとすかっと さわやかです」テレビのコマーシャルで流されるたくさんの食べ物の 情報。  ふっと気づくと、自分の体の必要なものを食べているのではなく、 コマーシャルなどに教え込まれた情報にしたがって食べています。  社会的な存在である「私」が食べ物を選んで、「わたし」という生 物の体をつくっているのです。  わたしはいま、小学生向けの食育のカリキュラムを作っています。 「何を食べるべきか」も伝えますが、「利益を求める人たちに、けっ こうひどいものを食べさせられている」という判断能力を身につけて もらいます。そして自分の体を大事にできる理想の食のイメージをも ってもらい、家族を説得し家族とともに理想の食事を食べるような 「技」で食事を変えていきます。  でも、子ども達の一番の敵は家族です。昔の栄養学は、食事と社会 のあり方は無視して、栄養素のことしか教えていませんでした。そう した栄養学から学んだ、いまの大人達は、平気でお菓子を食事代わり にし、足りないビタミンは錠剤でとっています。  食育を通して子ども達に、大人の食の指導もしてもらおうと考えて います。