エントロピー学会 第20回シンポジウム
9月21日(土) :省エネ授業
省エネ授業に取り組んで
あーすくらぶ 会長 荒木フサエ
1.なぜ省エネ授業をスタートさせたのか
住民グループ「あーすくらぶ」は、平成10年6月、省エネ共和国と同じ年に誕生しました。前身はその3年前に発足した、EM有機堆肥づくりを中心としたグループ「EMクラブ」です。省エネのきっかけは、モニターに町内49世帯が応募して、電気を意識するだけで予想以上に節約できることを実感したことでした。
町内に広めるためには、子どもたちと一緒に活動することが近道と考え、町内3つの小学校で「省エネ授業」を実施しました。
長崎大学環境科学部の中村助教授を講師に招き、PTA・学校の協力を得て開始しました。
大木町に3校ある小学校で生徒数の少ない大莞小学校へ中村先生、役場の境さんそしてあーすくらぶの役員数名で校長先生に話をしましたところ先生もぜひどうぞと快く了解をして下さり、その上、5年生の担任の待鳥先生も先生自身に負担のかからないようにしますとのこちらの意気込みに押されて1週間に1時間計4時間の時間を作ってくださいました。
次に、子供たちの親も一緒に勉強し、子供たちと共に実行して欲しいと考えておりました。幸いにもあーすくらぶの会員さんが父兄としておられましたので、その方々に呼びかけ、そしてその方たちが回りの親たちに呼びかけて下さいまして大莞小学校では、6人の父兄が参加して下さいました。残りの2校の小学校も1校が先に授業を受けたことでニュースとして聞かれていましたし、校長先生の理解のおかげでスムーズに4時間ずつの授業をすることができました。
平成13年度で3年目を迎え、少しずつ定着しつつあります。
2.笑顔で!省エネ授業
平成11年、最初の省エネ授業がスタートしました。
1時間目、子どもたちは電気という形のない物を全く意識をしていませんでした。しかし授業が進むにつれて、自分たちの未来のためにも「省エネをしなければ」という意識が子どもたちに芽生えるのを感じました。
省エネ授業は、40年後の未来図を子どもたちに描いてもらうことからスタートします。
子どもたちは、自動車が空を飛び、身の回りの世話をしてくれるロボットがたくさんいる社会を想像し、描いていました。
そのためには燃料が必要ということを、全く意識していません。40年後には燃料の一部の石油がなくなるかもしれないと知り、形が見えない電気をどのようにして利用しているか、理解を深めています。
「あーすくらぶ」の仲間も授業に参加して、子どもたちに“省エネの思い”を伝えます。そのために勉強もします。
田中美和子さんは、小学生3人の母親で、勤めもしている、5人家族の主婦です。彼女は、10年前は1万円近かった電気代を、現在は3千円前後に減らされています。
私達は彼女に学びながら、現在も省エネを意識しつつ毎日を過ごしております。
省エネ授業では、3時間目に「あーすくらぶ」の仲間数人が省エネ実践を話しますが、田中さんのことを私達は「省エネの達人」と紹介します。
仲間は全員働いていますので、時間のやりくりがたいへんですが、子どもたちに話しかけたいという思いが、現在も続ける原動力になっています。
私自身、環境活動を行うのは休日や夜だけでしたが、勤務時間中に授業に参加することによって、今までよりてきぱきと仕事をこなすようになりました。
また、子どもたちの前で話すからには勉強もしておきたいと、図書館に通う回数がぐーんと増えました。
「あーすくらぶ」の活動を自治体の方が聞きに来られたり、新聞・ラジオの取材など、人前で話をすることが増えて忙しくなりましたが、“心の充実”を感じております。仲間も皆、同じなのでしょう。どの人も笑顔がステキです。
省エネ授業は、子どもたちに教えることから始まりましたが、一方通行ではなく、子どもたちから“元気”をもらい、他の人達との交流が広がり、多くを得ることができました。
今後は、子どもたちの中に育った省エネ意識を後押しして、住民みんなが生涯に渡ってそれぞれの省エネができるよう、いろいろな可能性を探っていきたいと話し合っております。
隣人から地域へ、世界へ、将来世代へと広がっていく夢が見たいですね。
3.子どもたちに伝えたメッセージ
子供たちというのは、省エネがどんな意味なのか全く知りません。
だから、地球のため、未来の自分のためということを伝えたかった。
地球の温暖化や資源の減少など大きな問題があって自分たちの未来は暗いことに気づかせ、「じゃー、何とかしなくちゃ。」と動機付けます。
アジアの人口およそ37億人に対し、日本人は1億人。教室の中の児童1人がアジアにいる日本人の割合であることになります。
ところが、電気エネルギーに関しては、アジア総数の半分を日本人が使用している。そのことを反対の立場の人から見た場合どう感じるか。
何かしなければいけません。そこで省エネルギーです。
そこから、「もっと、自分の生活を考え直そう。」と、真剣に受け止めてくれました。
さて、どうしたら省エネができるのでしょうか。まず、私の家の電気代を見て下さい。
省エネをしようと意識したことでこうなりました。
お金にして1年間で5万2千円安くなりました。もちろん家族の協力も大きかったです。一緒にしてくれました。まずは今まで使いすぎていた電機を意識してみて下さい。
次に何に気をつければいいのか。教室の蛍光灯は1本40Wの電気を使います。
主な電気製品の消費電力 テレビ 200W |
明かりを消すことも大切ですが、見ていないテレビを消す、ボリュームや画面の明るさを調節したりすることでより大きな省エネの効果が得られます。
また、こたつを使うとき、掛布団や敷布団を2重にしたり、洋服を1枚多く着てメモリを強から中、そして弱にしたりというのも有効です。
なお、掛布団の厚さを3cmから10cmにすると約20%の省エネになるそうです。
また、夏のエアコンを使うとき、温度設定を1℃上げるだけで10%の省エネになるそうですし、風の通りを良くして扇風機を使うほうがもっといいです。
このようにして無駄な電気を使わないようにしましょう。
『必要な電気まで消すことはないですよ。無理をしないで、ちょっとだけでも、自分たちが大人になったとき、困らないように気をつけましょうね』。
1人1人の行動の成果は小さいけれど、教室の子どもたち、両親や家族そして回りの人たちが省エネを実行すれば大きな成果になります。
4.省エネ授業のその後
町内の3小学校5年生対象に授業を企画したのですが、最初の大莞小学校では、子供たちへの課題が多すぎてちょっと負担もあったようですが、熱心に取り組んでくれました。
逆に2校目では、課題を減らしたところ、子供たちの意識まで薄かったように感じました。
それをふまえて、3校目の大溝小学校では、担任の先生ともミーティングを何度も重ね、主導権もなるべく先生にお任せするという授業にしたところ、本当に子供たちが生き生きと活動してくれました。
3校とも、毎時間ごと、保護者に授業参観を呼びかけ、子供たちの家での課題協力をお願いしていましたが、よく理解していただき、生活に根づいたようです。先生方も、もっと自分たちが地球環境のことを理解し、その上で教えていきたい、そして、次学年の子供たちにもつないでいきたいとおっしゃってくださいました。
この省エネ授業に取り組んで、最後の授業で子供たちに感想を発表してもらったとき、「お父さんやお兄さんに協力してもらえなくてめげたこともあったけど、自分一人でも頑張る。」とか、「せっかく勉強したことだから、まわりの人に伝えていきたい。」と、発表した子供がいたときは、実際、私自身仕事しながら、時間に合わせて出てくるのはたいへんだったのですけど、うれしかったです。
この企画をして本当に良かったと思いました。
資料 西日本新聞 2002年8月25日